幼子1('24/10/25)

 

ある夜 枕もとで

母の閉じた眼から彷徨い出たものが

幼子を星降る谷間へ飛び込ませたのだった

そこで彼は自分の顔の皮膚が

羽搏き始めるのを感じた


世界の拡がりに満ちみちているものたちの間で

かすかに息づく やわらかな満ち欠け

抱き寄せ しかも 暗い翳を落とす瞼

握りしめた拳のふるえに 歌も光も歩みを合わせて

なびくそよ風 ひと雫の言葉が

手のひらの花開く時まで

その行方に 朝の光を投げかけ続ける