ある夜 枕もとで
母の閉じた眼から彷徨い出たものが
幼子を星降る谷間へ飛び込ませたのだった
そこで彼は自分の顔の皮膚が
羽搏き始めるのを感じた
世界の拡がりに満ちみちているものたちの間で
かすかに息づく やわらかな満ち欠け
抱き寄せ しかも 暗い翳を落とす瞼
握りしめた拳のふるえに 歌も光も歩みを合わせて
なびくそよ風 ひと雫の言葉が
手のひらの花開く時まで
その行方に 朝の光を投げかけ続ける