自意識


ある時 ここに雷が

降り落ちる 若木が燃え立つ

表情かおを砕かれ 声を根元から折られ

雨に打たれた幼子は

誰もいない部屋に逃げ込み

そして 鏡の前で


あのとき両親ふたりの前に

僕は居たのだろうかと

おもわず 冷たい指で頬に触れた

その瞬間とき

かつて幼子だったものは 自分のすぐ後ろから

もう一人

自分が視ていることに気がついたのだった


表情かおを失った子どもたちは

自分の足で

恒星ほしから離れ始める

苦役に赴くような面持ちで

かつては傍から見上げたあの皴を刻みつつ


ある者は

長じてふと振り返ると

夜空を讃嘆する人々のように

遠く輝く光に見とれている

その間隙を満たす闇に縛られたまま